ローリングストックをやめたワケ【実は挫折する人が多いんです】
なぜ?ローリングストックが続かない代表的な理由
「食べながら備える」という理想的な防災備蓄法、ローリングストック。行政や多くのメディアで推奨されていますが、実際に試してみて「続かなかった」という声は驚くほど多く聞かれます。その背景には、理想と現実の間に横たわる、いくつかの共通したハードルが存在します。
- 見えない家事としての在庫管理の手間:何をどれだけストックしているか、それぞれの賞味期限はいつまでか。これを常に頭の片隅に置き、消費したらリストを更新し、次の買い物で忘れずに補充する。この一連のサイクルは、目に見えにくい「精神的な家事」として重くのしかかります。特に仕事や育児で忙しい日々の中では、防災備蓄の優先順位は下がりがち。「また今度でいいや」が積み重なり、気づけば管理が崩壊してしまうのです。
- 消費と補充の無限ループが生むプレッシャー:「ストックが少ない時に大地震が来たらどうしよう…」という漠然とした不安が、かえって精神的なプレッシャーになることがあります。「使ったらすぐに買い足さなければ」という強迫観念に駆られ、買い物のたびに義務感を感じて疲弊してしまうのです。本来は安心のための備えが、新たなストレス源になってしまっては本末転倒です。
- ライフスタイルとの根本的な不一致:健康志向で普段から自炊が多く、レトルト食品や缶詰をあまり食べない家庭にとって、ローリングストックは特に難しい課題です。備蓄品を消費するためだけに、普段は食べないものを無理に食事に取り入れるのは苦痛であり、長続きしません。食生活そのものを変えるほどの大きな動機がなければ、いずれ無理が生じてしまいます。
【実例】「ストックがある」がかえって消費を早める皮肉なジレンマ
「多めにストックしておけば、いざという時も安心」という考えが、実は備蓄を機能させなくする原因になることがあります。これは非常に皮肉なジレンマです。
例えば、子供のいる家庭では、目の前に好きなお菓子のストックが豊富にあれば、普段より多くをねだってしまいがちです。「まだたくさんあるから」という安心感が、結果的に消費ペースを加速させてしまいます。
これは大人も同じです。私の体験では、トマト缶やツナ缶が棚に3つも4つも並んでいると、「今日はこれを使ってパスタにしよう」「明日は煮込み料理にしよう」と、無意識のうちにそれらの食材を使った献立を考えてしまいます。結果、1ヶ月持つはずだったストックが2週間でなくなり、慌てて買い足しに走ることに。「備蓄」ではなく、ただの「まとめ買い」になってしまっていたのです。
私がローリングストックをやめた赤裸々な体験談
かく言う私も、かつてはローリングストックを熱心に実践していましたが、開始から1年ほどで完全にやめてしまいました。最大の理由は、食品ごとに全く異なる消費スピードの管理が、私の手には負えなかったからです。
牛乳やヨーグルトのように数日で消費サイクルが回るもの。パスタや乾麺のように月に数回消費するもの。そして、ケチャップや缶詰のように数ヶ月に一度しか使わないもの。これら多岐にわたるストックを、「防災」という重要な要素を加えながら管理しようとすると、頭の中は常に混乱状態でした。「味噌のストックは十分だけど、乾電池はいつの間にか最後の1本になっていた!」といった事態が頻発し、完璧に管理できない自分に嫌気がさしてしまったのです。この「管理できないストレス」が、「やめる」という決断に繋がりました。
ローリングストックをやめた私がたどり着いた、もっと楽な備蓄管理術
防災用と日常用を「きっちり分ける」管理方法への転換
ローリングストックの複雑さに疲れ果てた結果、私は思考を180度転換させました。それは、防災専用の備蓄と日常使いのストックを、物理的にも意識的にも完全に分離するという方法です。防災用は**「年に一度、防災の日(9月1日など)にだけ見直せばよい特別なもの」**と明確に位置づけました。この決断により、日々の買い物で在庫を気にする精神的なプレッシャーから完全に解放され、防災備蓄がとても楽なものに変わりました。
長期保存できるおすすめ食品で「年1回チェック」の超ずぼら備蓄
この「分離方式」の鍵となるのが、長期保存食の活用です。最近の長期保存食は、かつての「乾パン」のような味気ないイメージとは全く異なり、驚くほど美味しく進化しています。味付けご飯やおかずの缶詰、フリーズドライの具沢山スープなど、その種類は非常に豊富。賞味期限も5年、7年は当たり前で、中には10年、25年と驚異的な期間持つ製品もあります。
これらを「防災専用ボックス」にまとめて一度揃えてしまえば、次のチェックは1年後でOK。究極の「ずぼら備蓄」ですが、これならどんなに忙しい人でも確実に続けられます。年に一度、期限が近いものを家族で試食するイベントにすれば、防災意識の共有にも繋がります。
おすすめスーパー活用術!日常の買い物ついでにできる「ゆる備蓄」
完全に備蓄を分けることに抵抗がある方や、少しは循環させたいという方には、**「いつもの買い物で、なんとなく気持ち多めに買っておく」**くらいの、ゆるいルールがおすすめです。
この時、積極的に活用したいのが大手スーパーのプライベートブランド(PB)商品です。PB商品は価格が手頃なだけでなく、メーカーと共同開発した美味しい商品も多く、選択肢が豊富です。また、重い水やお米、かさばるティッシュペーパーなどはネットスーパーを利用すれば、玄関先まで届けてくれます。特売日を狙って注文すれば、コストも抑えられます。無理に「ローリングストックするぞ!」と意気込むのではなく、普段の買い物の延長線上で、少しだけストックを厚めにすることを意識するだけで十分です。
まとめ:ローリングストックをやめたっていい!自分に合う防災が一番の正解
ローリングストックは、数ある防災備蓄方法の一つに過ぎません。それが素晴らしい方法であることは間違いありませんが、万能ではなく、すべての人に合うわけではないのです。一番大切なのは、**「自分の性格やライフスタイルを理解し、普段の暮らしの中で無理なく続けられること」**です。
やってみてダメなら、長期保存食に切り替えたり、日常と防災用を分けたり、管理方法を変えてみる。試行錯誤の末に見つかった「自分だけの方法」こそが、あなたと家族を守る一番の備えになるのです。